音を紡ぐ
「私の、夢はね・・・・・・・・・バンドを組んで、大きなステージで歌う。ことだよ。前に聞かれたとき、答えられなくてごめん。」


話し終わると斗季は何も言わず私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。


緊張していたのが解けてちょっとだけ涙が出そうになった。


「話してくれてありがとう。ちょっと緊張した?」


「うん。だって、誰かに話すの初めてだもん。ノートにしか、書いたことなかった。やりたいこととか、夢をたくさん書いたノートがあるんだ。・・・・・・叶うかどうか分からないし、前向きに考えようと思っても病気のことが頭をよぎってしまうの。」


「病気だから、叶わないかもしれないって諦めてるってこと?」


「・・・・・うん。やっぱりそういう風に考えちゃう。でもね!今日歌ってみたら楽しかったの。心の底から声を出して歌ったら、心がスッと軽くなったの。」


「そっか。それは俺もあるかな。何か悩んでも歌うと心が軽くなって、悩んでたことがどうでもよくなったりする。でもさ、」


そう言って私の手を握って話す斗季。

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