寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「王太子や国王が、王城で妃と一緒にいられる事は、国が安定しているって事だ」

 テオが、セレナを見て呟いた。
 その声は硬く、セレナは眉を寄せた。

「安定?」
「そうだ。いざ戦が始まったり、そうでなくても他国との関係が悪化すれば、王太子や国王が王城でゆっくりと過ごす事はできない。戦地に向かう事もあるだろうし、状況を打開するために忙しくなるだろうし」
「……そうですね」

 小さな諍いや衝突はあれど、長い間戦のない安定した時代に生きているテオとセレナにとって、こうして穏やかに過ごす日常は当然の事だと思える。
 しかしそれは、多くの人の努力によるものだ。

「もしも戦にでもなれば、たとえ俺が王城にいたとしても、セレナとこうして密着して体温を感じる事なんてできなくなる」

 低く真面目なテオの声に、セレナは口を結んで耳を傾ける。

「俺とセレナは一心同体。それは、体も心もずっと寄り添うって事だけどさ、それができるのは、戦もなく平和で、王太子や国王が城にいられるおかげだ」
 
 テオは普段の軽い口調など微塵も感じさせない声音でそう言った。
 今思いついて口にしたわけではなさそうな言葉を聞いて、セレナはテオの覚悟を感じた。
 明るく軽い、苦労知らずの第二王子。
 そんな面影はどこにもなく、セレナはテオから目が離せない。

「うん。……たしかに。戦が始まったら、殿下も城にはいられないかも……」

 セレナは鈍い痛みを胸に感じながら、こくこくと頷いた。
 テオが戦に赴くことを想像するだけで目の奥が熱くなる。
 ランナケルドの騎士団に交じっていくつかの訓練に参加した事があるセレナは、ランナケルドの騎士団がかなり優秀で、そして他国も同様だということをよく知っている。

「ミノワスターもそうだけど、他の国の騎士団のみんなも強くて優秀。ミケーレも、ああ見えて剣の腕は一流で、誰からも一目置かれているし……。戦になったら、相手国と共倒れになると思う」
 
 思い返すようにそう言ったセレナの言葉に、テオはピクリと反応する。

「ミケーレ……」
「殿下? どうしました?」
「いや、なんでもない。ミケーレか……」

 テオはセレナの肩をぐっと抱き寄せて唇を引き結んだ。

< 128 / 284 >

この作品をシェア

pagetop