寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 愛想よく手を振りながらも口元だけは機嫌が悪いテオに、セレナは怪訝そうな顔をした。

「殿下?」
「なんでもない。ただ、セレナはもう俺のモノだって叫びたい気持ちを我慢しているところだ。誰にも……たとえ兄さんでも、優秀な騎士でも、誰が相手でもセレナを渡すつもりはないからな」
 
 テオの言葉に、セレナは驚き、言葉を失う。
 自分は心からテオに求めれらているような気がしたのだ。
 テオがクラリーチェと仲睦まじくしている様子を間近で見ていたセレナは、自分がクラリーチェ以上にテオから求められる事はないだろうと考えていた。
 今テオが口にした言葉に甘い響きを感じても、それは結婚式を終えて気持ちが昂ぶっているせいだろう。
 しかし、これまでテオがセレナを甘やかし、必要以上に近くにいた幾つもの思い出を振り返れば、テオに愛されたいという願いを捨てる事もできない。
 セレナは、たとえ愛されなくてもテオと結婚できるだけで幸せだと思っていたが、それは間違いだったとようやく認めた。
 セレナは落ち込む心を振り払い、眼下に広がる国民たちの明るい笑顔と声に集中する。
 その中に見知った顔を見つけるたび、気持ちは落ち着いていく。
 カルロからテオに王太子が変わって不安も多いはずなのに、誰もがこの結婚を喜んでいる。
 セレナは父の言葉を思い出した。
 王族の使命は国民たちに単調な日常を与える事。そのために力を尽くす事。
 幸せは単調な日常の中で作られていくものだと聞かされていたが、その意味が少しわかった気がした。
 それは、テオが口にした言葉の意味と同じだ。
 国王と王妃が王城で寄り添い、笑い合っていられる事が、国全体の幸せの指標となる。
 国の繁栄と国民の幸せのためにも、そして何よりセレナ自身の幸せのためにも、テオの隣にいたい。
 セレナはもぞもぞしながら、さらにテオに体を寄せた。というより、密着した。

「一心同体……」

 セレナはテオの言葉を繰り返し、ミノワスターの国民たちが幸せであるようにと、心から願った。
 国が安定し、国民が幸せに暮らせるよう、力を尽くそう。
 テオと共に王城でつつがなく暮らせる事、それが国の平和と幸せの象徴だと納得した。

「いいだろう、一心同体。これから、末永くよろしくな」

 テオは密着してきたセレナを意識しながらそう言った。
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