寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
テオとセレナを祝うために集まってくれた人たちを置いて早々に引き上げるなんて考えられない。
晩餐会が始まって一時間あまり、招待客は皆おいしい料理と酒に満足したのか、緊張感が抜けた様子で笑い声をあげている。
結婚式から続いていた緊張感がようやく解けたセレナは、温かい雰囲気に感激していた。
この一年、結婚式の準備を続けながらも、テオと本当に結婚できるのだろうかと不安だった。
テオは、本当はセレナではなくクラリーチェと結婚したかったのだと思いこんでいるせいで、テオがやはり結婚できないと言い出すのではないかと恐れていたのだ。
とはいっても、国と国が関係する結婚を、テオやセレナの意思だけで取りやめる事はできない。
テオとの結婚を望んでいるセレナは、その事実にすがりながら、この一年を過ごしてきた。
そしてようやく迎えたこの日、無事にテオと結婚できてホッとしていた。
「陛下たちもさっき退出されたし、そろそろ俺たちも部屋に戻ろう」
テオが背後に控えていた執事のヴァルターに視線を向けると、彼は小さく頷きテオの椅子を引いた。
「お部屋の準備はできております」
最古参の執事らしく、ヴァルターは落ち着いた声でテオに伝えた。
「そうか」
テオは立ち上がり、セレナに手を差し出した。
セレナは本当に部屋に戻るのかと眉を寄せながらも、誘われるまま手を置いた。
テオは嬉しそうに目を細めてその手をぎゅっと握った。
ようやくセレナと結婚し、早くふたりになりたくてたまらないのだ。
バルコニーで手を振った後、ふたりで部屋に戻ってゆっくりしようと思っていたが、ヴァルターがそれを許さず、叶わなかった。
『各国の王族や貴族の方々が挨拶をしようとお待ちです。これも決まり事ですのでとっとと済ませてくださいませ』
国王陛下が王太子の頃から王宮で執事として働いているヴァルターは、今もテオの事を子供のように扱う。
テオにとっては家族のようなもので、セレナにとってのアメリアのような存在だ。
ヴァルターに急かされ、結局休みを取る間もなく晩餐会に突入し、テオは少々拗ねていた。
そして、国王陛下とテオの挨拶が無事に済み、ランナケルドの国王夫妻も疲れたのか少し前に退席し、今は王宮内で一番豪華な客間で休んでいるはずだ。