寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「えっ。あ、あの」
重いドレスのせいでバランスを崩したセレナは、気づけばテオの胸の中にいた。
ざわめいていた部屋が、一瞬静かになる。
ふたりの姿に、視線が集まり、テオはニヤリと笑い、セレナは恥ずかしさのあまりテオの胸に顔を埋めた。
テオはセレナを抱きしめながら、頬が緩みそうになるのをどうにか堪えた。
各国の要人たちが大勢いる中、王太子として凛々しくあろうとするのだが、セレナの可愛らしさに気持ちは奪われ、にやけそうになって仕方がない。
その時、背後に人の気配を感じた。
「王太子様、退席されますか?」
近くの席にいた公爵が歩みより、ひざを折った。
「ああ、今日は遠くからご苦労だったな。俺たちは退席するが、このまま楽しんでくれ」
「はい。王太子様もお疲れでございましょう。改めておめでとうございます」
腰を低くし、頭を下げながら祝いの言葉を口にするが、公爵の声は冷たく、セレナはテオの胸から顔を上げた。
「セレナ妃殿下も、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
セレナは慌ててテオの胸から離れ、姿勢を正した。
ふたりの目の前にいるのはミノワスターで大きな力を持つふたつの公爵家のうちのひとつ、トルノー家の長であるシャルル公爵だ。
中肉中背、猫背気味のせいで小さく見えるが、眼光鋭く周囲への視線はいつも強い。
「セレナ妃殿下のおかげで、ミノワスターの将来は安心でございます。これまで水不足で悩んでいた国民たちも、喜んでおります」
シャルル公爵は、意味ありげに笑った。