寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 しかし、さんざん体のあちこちを手入れされ疲れてしまったセレナは、侍女たちの羨望のまなざしに気づくこともない。
 ラーラにあれこれ指示されながらセレナの準備をしていた侍女たちは、目の前の美妃の世話にやりがいを見出していた。
 乗馬が得意で剣を振る元気な王太子妃だが、そのおかげで体はきゅっと引き締まっているうえに胸は豊かだ。
 おまけに腰の位置は高く手足も長い。
 抜群のスタイルをまじまじと見ながら、もっと手を加えれば、これからもっと美しくなるに違いないと、侍女魂に火がついていた。
 蝶に生まれ変わる前のさなぎ。あるいは磨けば光る原石。
 セレナを担当する事になった侍女三人は、顔を見合わせ笑顔を浮かべた。
 
 そして、その頭には、テオが用意させた数多くのドレスが次々と浮かび、どれもセレナに似合うはずだと満足げに頷いた。

「セレナ様、こちらをお召しになっていただきますよ」
「え?」
 
 バスローブ姿でドレッサーの前に座るセレナの目の前に、ひらひらとしたものが現れた。
 ラーラが手にしているそれは、シルクの艶がまぶしいナイトドレスだ。

「テオ様の好みがどんなものかはわかりませんが、こちらならきっと大喜びですよ」

 セレナの髪をといていた侍女が、ふふふっと笑いながら声を弾ませた。

「大喜び……」

 セレナはそれを手に取り、それがなんであるかを察した。

「こ、これは……」

< 138 / 284 >

この作品をシェア

pagetop