寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
しかし、さんざん体のあちこちを手入れされ疲れてしまったセレナは、侍女たちの羨望のまなざしに気づくこともない。
ラーラにあれこれ指示されながらセレナの準備をしていた侍女たちは、目の前の美妃の世話にやりがいを見出していた。
乗馬が得意で剣を振る元気な王太子妃だが、そのおかげで体はきゅっと引き締まっているうえに胸は豊かだ。
おまけに腰の位置は高く手足も長い。
抜群のスタイルをまじまじと見ながら、もっと手を加えれば、これからもっと美しくなるに違いないと、侍女魂に火がついていた。
蝶に生まれ変わる前のさなぎ。あるいは磨けば光る原石。
セレナを担当する事になった侍女三人は、顔を見合わせ笑顔を浮かべた。
そして、その頭には、テオが用意させた数多くのドレスが次々と浮かび、どれもセレナに似合うはずだと満足げに頷いた。
「セレナ様、こちらをお召しになっていただきますよ」
「え?」
バスローブ姿でドレッサーの前に座るセレナの目の前に、ひらひらとしたものが現れた。
ラーラが手にしているそれは、シルクの艶がまぶしいナイトドレスだ。
「テオ様の好みがどんなものかはわかりませんが、こちらならきっと大喜びですよ」
セレナの髪をといていた侍女が、ふふふっと笑いながら声を弾ませた。
「大喜び……」
セレナはそれを手に取り、それがなんであるかを察した。
「こ、これは……」