寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



 これまでの人生でまったく縁がなかったかわいらしいナイトドレス。
 どう見ても腰のあたりまでしか隠すことができないほど丈は短い。
 広く開いた襟元にはレースが縫いつけられ、袖口にも同じレースが縁取られている。

「ま、まさか、これをわたしが着るの?」

 セレナはナイトドレスを目の前に広げ、まじまじと見つめる。
 胸の下あたりで切り替えられ、ふわりと広がった裾を揺らすと、シルクに部屋の明かりが反射してキラキラしている。
 背中の部分を見れば、リボンが上下に並んでいるが、それをほどけばナイトドレスはするりと肩から落ちるようになっている。

「は……恥ずかしすぎる」

 セレナはナイトドレス身にまとった自分の姿を想像し、ぐっと言葉に詰まった。
 華奢な体ならまだしも、細いとはいえ鍛えられているとわかる身体にこれは似合わない。
 クラリーチェのようなはかなげで色白の女性ならテオも喜びそうだが、腕や足に擦り傷を幾つも残している体には不向きだ。
 そう思った瞬間、テオがクラリーチェと仲睦まじくしていた様子を思い出して胸が痛んだ。
 テオがどれだけセレナに優しくしても、まだまだ不安は残っているのだ。
 ランナケルドから持ってきた綿の肌着で十分だと言おうとした時、部屋の扉を開ける大きな音が響いた。
 セレナがその音にピクリと身をすくませ振り返れば、不機嫌な顔をしたテオが部屋に入ってきた。
 テオはセレナの横で腰をおろして膝立ちになると、セレナの顔を覗き込んだ。


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