寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「まだか?」
「あ、あの……」
「て、テオ様、勝手に入ってこないでくださいませ。セレナ様の準備はまだできておりません」
突然テオが部屋にやってきて、ラーラは呆れた声を上げた。
「湯あみは終えたのだろう? それで充分だ。さ、寝室に行くぞ。いくら待ってもこないから迎えに来たんだ」
テオもラーラに負けていない。何を言われようが退くつもりはないようだ。
セレナの背中と膝裏に手を差し入れ、あっさりと抱き上げた。
「で、殿下っ」
突然セレナの体はふわりと浮き、気づけばテオの顔が間近にあった。
「ま、まだ何も準備が……」
焦るセレナの言葉にテオは「準備は必要ない」と言ってずんずん歩き出す。
「テオ様、まだセレナ様は湯あみを終えたばかりでお着替えも終えておりません」
ラーラがテオの後を追いながら声をかけるが、テオは振り向くことなく歩を進める。
王太子と王太子妃の部屋は並んでいて、部屋の中から行き来できるドアがある。
テオはそのドアを開けて王太子の部屋に行くと、部屋の中央のソファにセレナをゆっくりとおろした。
「……いい香りだ」
「え?」
ソファに座るセレナの目の前に膝をおろしたテオは、セレナの首のあたりに顔を近づけると、浅く息を吸った。