寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「湯あみの時、バラの花びらが湯に浮かんでいたんだろう? いい香りだ」

 城の庭園にはあらゆる種類のバラが咲いているが、ラーラはここぞという時には躊躇なくたくさんのバラを摘み、湯に浮かべるのだ。
 テオが小さい頃には誕生日はもちろん、騎士団に入団した時や成人の儀を無事に終えた夜にはこれでもかというほどのバラが湯に浮かび、その強い香りにむせたほどだ。

「バラを大切に育てているラーラの気持ちだ。俺とセレナの結婚を喜んでるって事だな」
 
 喜んでいるというより、子供がいないラーラにとって、テオは息子でありセレナはわい娘のようなもの。
 単なる女官長とはいえ、誰よりもテオの側にいたラーラは、ふたりの結婚を心から喜んでいるのだ。

「俺、この匂いが好きなんだ」
 
 膝立ちのまま、テオは正面からセレナの腰を抱き、彼女の肩に顔を乗せて目を閉じた。
 そのまま唇は耳たぶから頬をかすめ、当然のようにセレナの唇にたどり着いた。
 テオの唇は、セレナの唇を甘噛みするように吸い付き、そのたびリップ音が響く。
 テオの動きについていこうとするセレナの必死な顔に、たまらない気持ちになったテオは、セレナの口に舌を差し入れた。
 そして、唇を味わいながら舌が咥内を動き回る。
 婚約してから何度かテオとキスを重ねたが、まだまだ慣れないセレナの応えかたはぎこちない。
 けれど、目を閉じてテオの動きに集中しているうちセレナの舌はテオのそれと絡み合い、その甘さがセレナの中に広がっていく。
 いつの間にか、セレナの体はソファに押し付けられ、セレナの両手はテオの首に回された。


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