寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



 結婚して以来、なかなかセレナと共に過ごせずにいる。
 ミノワスターの王太子になる事は、テオがセレナとの結婚を望み、カルロとクラリーチェが互いに想いを寄せ合っているとわかって以来覚悟していたが、国の未来を好転させつつ互いの結婚相手を取り換える計画の実現は、思いのほか骨が折れた。
 まだ大人になりきれていなかったセレナには秘密にし、テオ、カルロ、クラリーチェの三人で密かに進めていた計画は無事に実現したが、この一年もの間、後始末ともいえる雑務に追われている。
 その最たるものが、カルロを次期国王として後押ししてきた貴族たちとの関係改善だ。
 国内の有力貴族の娘だったカルロの母は、当時王太子だったジェラルドと政略結婚させられ、男児を出産したのだが、産後、体調が戻る事なく亡くなった。
 その後、ジェラルドは新しい妻を迎え、テオが生まれた。
 そして起こった先の王妃と現王妃を後押しする貴族同士の対立。
 王太子としての責任を果たし、国民からの信頼も厚いカルロを推す勢力と、現王妃の息子であるテオの方が王太子にふさわしいと強引に話を進める勢力。
 子供の頃から周囲の複雑な状況を見聞きしていたテオは、王位に興味がない事を早々に宣言し、気楽な第二王子を装って暮らしていた。
 権力や地位になんの魅力も感じない彼は、面倒な事が起こるたび、視察だと告げてランナケルドに逃げていた。
 そのたび、責任感がなく、頼りがいのないテオよりも、真面目に公務に取り組むカルロの方が王太子にはふさわしいという印象を国民に与え続けた。
 カルロを兄として尊敬しているテオは、自分の立場が悪くなろうとも、それでよかったのだ。
 けれど、テオがセレナに一目ぼれ、そしてカルロもクラリーチェを欲したとなれば状況は変わる。
 ランナケルドとミノワスターの後継者をどうするのか、そして両国の幸せな未来を考えながら、ふたりは愛する女との結婚に向けて力を合わせてきた。
 周囲の反感や混乱を招く事は承知していたが、後始末を終えるのにここまでの時間がかかるとは思ってもみなかった。
 テオはセレナの綺麗な横顔を見て、ほっと息をついた。
 ようやく一区切りつけそうだとはいえ、忙しい毎日で体は疲れている。
 愛する妻と、こうして一緒に過ごせる時間がもっと欲しい。

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