寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 テオは、膝の上に置かれているセレナの手をぎゅっと握った。
 セレナは嫌がるが、テオは剣を振っている者特有の硬さや手の平にあるマメに触れるのが好きだ。
 ランナケルドの中で自分の存在意義を見出そうとしていた彼女の努力を思い出し、いっそう、彼女が愛しく思えるのだ。
 クラリーチェに代わって女王になろうと無理をし、精いっぱい強がっていたセレナに会うたび、何度も彼女に言ってしまいそうになった。

『セレナがいるべき場所は、ミノワスターの国王となる俺の隣だ。無理をして鍛錬に励む必要もなければ、クラリーチェの代わりになろうとしなくていいんだ』

 何度も口をついて出そうになる言葉を胸に秘め、セレナの側で冗談を言って気持ちをごまかした。
 早まるな。時期を待て。
 婚約までの長い時を、テオは自分にそう言い聞かせながら耐えてきた。
 ちゃんと自分が幸せにするから、のんびりと待ってろと、言いたくて仕方がなかったが、焦れば計画は頓挫する。
 すぐにでもセレナを手に入れたくて弾けそうになる心を必死に抑え、ようやくの想いで結婚までたどり着いたのだ。
 セレナと結婚し、ミノワスターの王位を継承する。
 そしてカルロはクラリーチェと結婚する。
 その計画は、カルロたちの結婚で完結する。
 カルロよりも一足早く愛する人を手に入れたテオは、セレナの手の平の硬さに触れながら、必ず幸せにしようと改めて誓った。
 それまでふざけた口調でセレナをからかっていたテオが、真面目な表情を見せれば、セレナは戸惑い、そしてときめく。
 互いに見つめ合い、このまま城へ戻ってふたりきりになりたいと感じた時。
 少し離れた席から、セレナを呼ぶ声が聞こえた。

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