寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



 テオが言う通り、結婚が決まって以来、セレナは丁寧な言葉遣いを心がけ、子供の頃には許された馴れ馴れしさを取り払った大人の対応で接している。
 それまでの第二王子という立場から王太子となり、いずれ大国ミノワスターの国王陛下となる方に、無礼は許されないという理由もあるが、一番の理由は、テオと親しくなりすぎて、これまで以上に苦しみたくないからだ。
 テオを愛するセレナの気持ちは年を重ねるごとに大きくなったが、その想いが報われない事はわかっていた。
 テオがクラリーチェと仲睦まじく過ごす様子を幾度も目にし、自分の気持ちは一方通行だと思い知らされていたからだ。
 何より、セレナもカルロとの結婚が決まっていたのだ。
 カルロと結婚すれば、テオへの想いはいずれ消えていくはずだと自分に言い聞かせ、叶わぬ恋心を封印しようとしていた。
 しかし、運命は思いがけない展開を見せ、セレナはテオと結婚した。
 政略結婚が強いられる王族に生まれたにもかかわらず、初恋の男性と結婚できる幸せは誰もが手に入れられるものではない。
 本来なら、セレナはテオとの結婚をもっと喜んでもいいはずだ。
 しかし、セレナと結婚した今でも、テオはクラリーチェを愛している。
 こうして隣に並び、互いの呼吸を意識せざるを得ない近い距離にいる今も、テオはクラリーチェを見ている。
 これまでよりも肌が輝き、表情のすべてが優しく見えるクラリーチェに惹かれ、目が離せないとわかる。
 テオにとってクラリーチェはやはり特別で忘れられない存在なのだと、改めて実感したセレナは目の奥が熱くなるのをぐっとこらえた。
 長い間育ててきた愛情は簡単には捨てられないと、わかっている。
 セレナがテオへの気持ちを捨てられないのと同じだ。
 テオと結婚すればそれだけで幸せになれると考えるほど、セレナは子供ではない。
 そして、最近では、ソフィアのように愛する人を愛し続ければ、誰もがその相手からも愛されるわけではないと、感じてもいる。
 自分を一番に愛してもらえないつらさから自分の心を守るため、セレナはふたりの間に距離をとっているのだ。
 それまでとは態度も言葉遣いも変え、これ以上テオを好きにならないようにしているのだが、セレナのそんな他人行儀な態度に、テオはうんざりしている。

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