寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「いまさら猫をかぶっても仕方がないだろ。前みたいになんの気遣いも遠慮もない、強い振りをした優しいセレナが見たいんだけど」
テオは、セレナの顔を覗き込んだ。
結婚して一緒に暮らすようになれば、ふたりの距離も以前のように近づき、身体だけでなく心も寄り添えると思っていたが、セレナの態度は変わらず、夫婦だというのに誰よりも遠くにいるような気がしていた。
「俺が王太子だから遠慮してるのか? ばかばかしい」
なかなか頷かないセレナに、テオは眉根を寄せる。
「ばかばかしくありません。いずれは国王となるのですから、やはり敬意を払わなければ……」
強い視線で問うテオに気圧され、セレナが小さな声で俯いた時、辺りにざわめきが広がった。
国王陛下と王妃がふたりの近くに用意された特別席に着いたのだ。
警護にあたっている騎士団や、席についている貴族たちがすっと姿勢を正す。
そして、音楽隊のファンファーレが鳴り響き、式典が始まった。
「あ、俺も挨拶しなきゃいけなかったんだ」
テオが思い出したようにぽつりと声を上げた。
国王はもちろん、王太子として初めての公式行事に参列するテオも、水路完成を祝う挨拶をする事になっている。