寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナは、自分の想いがかん違いでなければいいと思いながらも、それを願ってしまう自分を持て余す。
テオは期待と不安に揺れるセレナを面白がるように笑い、ふっと息を吐いた。
「これから、殿下と呼ぶのは禁止。わかったか?」
「あ……はい。でも……」
「でも、じゃない。セレナが俺を名前で呼ばなきゃ誰が呼ぶんだよ。まさか、側妃を娶れとでも言うのか?」
「側妃……それは、絶対に嫌です。誰かと殿下を分け合うなんて、考えたくもない」
セレナはテオに身を傾け、彼の両手をぐっと握った。
「そ、そりゃ……国王にはそれが許されてるけど……」
落ち込んで俯き、次第に声が小さくなるセレナの姿に、テオはニヤリと笑った。
「じゃあ、側妃を娶らない代わりに、殿下なんて呼ばずにテオって呼べ」
唇をかみしめていたセレナが、視線を上げた。
「え、……そんな事で、いいの?」
本当は、セレナもテオのことを殿下とは呼びたくないのだ。
自分の心を守るためにそう呼んで、テオとの距離を作ってはいるものの、呼べば呼ぶほど心は疲弊していく。
「俺は、セレナが側にいればそれだけでいいなんて、言わない。一緒にいても寂しい関係なんて、論外だ」
テオの表情が、ぐっと引き締まった。
「俺は、セレナに愛されて幸せになりたい」
低く重い声。
セレナの耳元に囁かれた言葉は、彼女の頑なな心を大きく揺らし、胸にしまいこまれていたテオへの愛が、とくとくと溢れ始めた。
クラリーチェへの愛を残しているはずのテオに、心を明け渡していいものか。
セレナは決めかねていた。