寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 祝いの席で悲しい顔は見せられない。セレナは苦しい気持ちを胸にしまい、平静を装った。
 結婚し、ふたりで過ごす時間が増えるにつれてテオに愛されているかもしれないと感じていたが、それは錯覚だった。
 今もテオはクラリーチェに目を奪われている。
 セレナは泣きたい気持ちを堪え、唇をかみしめた。
 その時、会場に流れていたワルツの演奏が終わり、カルロとクラリーチェが満足そうな笑顔でお辞儀をした。
 カルロはクラリーチェの手を取り、誇らしげな笑みを浮かべている。
 セレナとの婚約期間中カルロは華やかな場が苦手だと言って、舞踏会に出席する事は滅多になかった。
 セレナは婚約者としていつ同伴を求められてもいいようダンスを習い、ドレスも靴も、季節ごとに用意していた。
 けれど、セレナがカルロと舞踏会や晩餐会に出席する機会はなかった。
 セレナ自身も、カルロと共に公の場に顔を出したいわけではなかったので、カルロが苦手なら仕方がないかと軽く考えていた。
 けれど、今こうしてクラリーチェと並んで幸せそうな笑顔を浮かべているカルロを見れば、華やかな場が苦手なのではなく、セレナとともに出席する事を避けていたとわかる。
 セレナの目の前がゆらり、滲んだ。
 まばたきひとつで涙がこぼれそうだ。
 天井を見上げ、まばゆいシャンデリアに目を細めた。
 今もすぐ隣にいるのに、手が届かないほど遠くにいるような、テオ。
 そして、長い間婚約者として近くにいたはずなのに、心を寄り添わせる事ができなかったカルロ。
 ふたりが愛し、欲しているのはセレナではなく、クラリーチェだ。
 セレナがどれほど努力を重ねても、結局どちらからも愛されなかった。
 ふたりだけでなく、父も母もクラリーチェを愛している。
 今更傷ついてどうするの……。

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