寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナは小さく息を吐き出し、気持ちを調えると、視線をシャンデリアからもとに戻した。
瞳にはまだ涙が浮かび、潤んでいるが、その表情は穏やかだ。
そして、すっと笑みを浮かべ、テオに視線を向けた。
「熱気でのぼせたみたいなので、風に当たってきます」
有無を言わさぬ強い口調に、それまでクラリーチェを見つめていたテオがセレナを振り返った。
「あ……じゃあ、俺も一緒に行くよ」
「大丈夫です。侍女の誰かを連れていきますから心配はいりません。お客様のお相手をお願いします」
セレナはそう言って笑顔を作った。
そのキレイな笑顔に、テオは違和感を覚え、口を閉じた。
感情豊かに表情を変える普段のセレナと、どこかが違う。
「挨拶ならひと通り終わってるから大丈夫だ」
「そうですか。ですが、王太子がこの場を離れるのはどうかと思いますので、殿下はこの場に残られたほうがよろしいかと」
「それなら、セレナだって俺と一緒にいたほうがいいだろう」
何を言ってもゆったりとした笑顔を崩さないセレナに、テオは焦りを覚える。
セレナの顔を覗き込んでも、何が普段と違うのか、よくわからない。
「……少し風に当たって落ち着いたら、すぐに戻ってきますから。それに、私がいなくても、殿下なら大丈夫ですよ」
ゆったりとした口調ながらもセレナの堅い意志を感じさせる言葉に、テオは顔をしかめた。
「あ、カルロ王子とお姉様が、殿下を見てますよ。行ってさしあげてください」
そう言うが早いか、セレナは部屋の片隅に控えていた侍女を呼びよせ、庭に通じるバルコニーへと足早に消えていった。