寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「は? なんだよ、兄さんとクラリーチェが見てるのはセレナだろ」
テオはセレナの後ろ姿を追いかけようとしたが、名前を呼ばれ、振り返った。
「セレナはどこに行ったの?」
そこにはカルロに腰を抱かれたクラリーチェがいた。
セレナが姿を消したバルコニーを不安げに見ている。
「ケンカでもしたの? セレナ、泣きそうな顔をしてたけど」
「泣きそう?」
「そう。泣きたいのを我慢してるみたいだった。テオ様、絶対にセレナを幸せにしてくださいって言いましたよね。どうなってるんですか?」
クラリーチェはテオの前に立つと、きっと睨みつけた。
「結婚して間がないのに、早速浮気でもしたの?」
詰め寄るクラリーチェの迫力に気圧され、テオは後ずさる。
「セレナはテオ様のことが好きで好きで仕方がないのに。裏切ったら許さないって言いましたよね」
「俺がセレナを裏切るわけないだろ」
長い時間をかけ、苦しいほどの我慢を重ねてようやくセレナと結婚できたのだ、浮気なんてするわけがない。
テオにとってセレナは生涯ただひとりの愛する妃なのだ。
側妃を持つことが許されているとはいえ、それはあり得ない。
「俺がセレナとの結婚のためにどれだけのことをしてきたか、知ってるだろ。本当なら、こんな舞踏会なんて出ずにふたりきりでいたいくらいなのに、あいつは殿下殿下ってうるさいし、俺を置いてとっとと離れるし」
泣きたいのは俺だ。
という言葉は格好悪いので口には出さない。