寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「このバラを浮かべていたのね」
セレナはそっとバラの花弁に触れた。
こんもりと丸く重なった花弁には重みがあり、その分香りも強い。
いつも強引に事を進めるテオのようだと、セレナはくすりと笑った。
同時に、胸がツキンとうずく。
湯あみの最中も、テオとの初めての夜を思ってドキドキし、逃げ出したいような、それでいて早く抱かれたいような、複雑な感情に押しつぶされそうだった。
けれど、セレナは幸せだった。
テオと結婚できたことに感謝し、テオがいれば、どんな事にも立ち向かえるような気がしていた。
クラリーチェの存在なんてどうでもよく、テオの側にいられればそれだけで幸せだと思えた。
セレナは王宮を振り返った。
テオの側にいたいと、口元を引き結ぶ。
たとえクラリーチェを見つめていたとしても、セレナがテオを愛する気持ちに嘘はないのだから……。
そう思いながらも、いざクラリーチェから目を離せずにいるテオを目の当たりにすると、逃げ出してしまいたくなる。
事実、今逃げ出しているのだが。
どうすればいいのだろうかと俯いた時、思い出したようにエミリが声を上げた。
「バラを用意する時、テオ殿下もこちらに来られてバラを選ばれたんですよ」
「え、殿下がわざわざ?」
「はい。結婚式の日、セレナ様がこちらに到着される前に侍女たちでバラを摘んでいたんですけど、テオ殿下がわざわざいらしてキレイなバラを選んだんです」
侍女はその日を思い出し、くすくす笑う。