寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「それでなくても朝から王宮内は忙しくて誰もが慌ただしくしていたんですけど、テオ殿下はセレナ様の到着が待ち遠しいのか城門の辺りをウロウロしたり、国境付近に迎えに行った騎士団からの連絡を今か今かと待たれていて……」

 侍女はそこまで話すと、肩を震わせ笑い出した。

「え、どうしたの……?」
「い、いえ、ただ、あの日のテオ殿下はとてもかわいくて……。あ、かわいいだなんて失礼ですね。セレナ様の到着をそわそわしながらお待ちで、どうにもじっとできないようで、バラを選びにいらしたんですよ。香りが良くてキレイなバラを真剣に選んでいらっしゃいました」
「……そ、そうなの……」
 
 セレナは顔を熱くし、両手を頬に当てた。
 テオのそわそわしている様子を想像するが、いまひとつピンとこない。
 
 おまけにセレナの到着を待ちわびていたと聞かされ、セレナの鼓動は激しく跳ねる。

「バラに限らず花に触れることがなかったせいか、バラを摘もうとして棘が指に刺さってびっくりされて……。元騎士団長だったとは思えないほど慌ててました」
「え、棘って、大丈夫だったの?」
「はい。指先にちくりと刺さって、ほんの少し血がにじんだ程度だったんですけど、テオ様の慌てぶりは見ものでした……。あ、すみません」

 エミリは言い過ぎたと思い、慌てて口を閉じた。
 セレナはバラの花を愛でながら、棘に指先を当てた。
 棘は鋭く、刺さればかなり痛いはずだ。

「テオ様、棘に刺された後も、バラの花を幾つも摘みながらセレナ様の到着を待ってらっしゃいました。それはもう、幸せそうな顔で、口元はずっと笑っていて……。アリス様と一緒の時にもあんな甘い顔は見たことありません。それどこか笑っている姿も見たことがない……あ」
「え、アリス様? って誰の事?」
「あの……」

 それまでくすくす笑っていたエミリの表情が変わり、セレナから目を逸らした。

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