寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「……どうしたの? アリス様って、お会いしたことあったかしら」

 テオに関係している女性のようだが、セレナの記憶にはない。

「あ、あの、アリス様は、あの、シャルル公爵様のご息女で、その」

 セレナと目を合わせようとせず、焦りながら話すエミリを見て、セレナは次第に理解する。

「テオ殿下の、恋人……?」

 セレナの言葉に、侍女はぴくりと体を震わせた。

「こ、恋人なのかどうか、よくわかりません。ただ、おふたりで舞踏会に出席される事が多くて……ですが、セレナ様との結婚が決まってからは、アリス様とご一緒の姿を見る事はありませんでした。それに、アリス様もサウス伯爵さまと婚約されていますし」

 セレナを気遣い、エミリは早口で言葉を続けるが、セレナはそれをすぐに理解できなかった。
 女性からの人気が高いテオに仲がいい女性がいたとしてもおかしくはないが、エミリの慌てぶりを見れば、セレナに知られるとまずいほど親密な関係の女性がいたらしい。
 セレナは強張った顔を隠すこともせず、黙り込んだ。
 エミリは自分の失言を後悔し、あたふたしている。
 普段のセレナなら、優しい言葉をかけるはずだが、今はその余裕すらない。
 テオにはクラリーチェ以外にも想いを寄せる女性がいたのかもしれない。
 そう言えば、と思い出す。
 テオには心に秘めた想い人がいるという噂があった。

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