寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「あの、差し出がましいようですが、大丈夫です。テオ殿下は、セレナ様を大切になさってます。これまで大勢の女性がテオ殿下の心を得ようとそれはもう、必死でしたけど、誰も相手にされませんでしたし、アリス様とも、恋人というよりは身内のような感じで……」
セレナを慰めようとエミリが言葉を続けるが、セレナは首を横に振った。
「いいのよ。テオ殿下が私を大切にしてくださっているのはわかっているから、大丈夫」
「ですが、セレナ様……。本当にアリス様とは何も……」
「大丈夫。驚いたけど、平気よ」
セレナはどうにか笑顔を浮かべた。
普段、表情豊かに笑うセレナが浮かべる作り笑顔はぎこちない。
エミリはそんなセレナを痛々しい想いで見ていた。
自分の失言のせいで、セレナを悲しませてしまい、心苦しい。
それと同時に、セレナを悲しませるテオにふつふつと怒りが湧いてくる。
エミリが王城で働き始めて一年が経つが、その間セレナを王太子妃として迎えるための準備を進めてきた。
ミノワスターでの人気の高さはもちろんだが、セレナの王女としての気品と強さを知るに従い、王太子妃仕えということに誇りを持ち始めていた。
テオのセレナへの一途な態度を考えれば、他の女性に気持ちを向けることはこの先もないはずだが、目の前で苦しげに俯くセレナを見れば、テオの守備の甘さに呆れてしまう。
「バラを摘む前に、ちゃんと気持ちを伝えなさいよ」
エミリは思わず舌打ちしそうになるのをぐっと堪えた。
「そろそろ戻ろうかしら」
怒りで胸をいっぱいにしているエミリの心中など知らず、セレナは小さく呟くと、バラの花をそっと撫でた。
しばらくの間じっと見つめ、気持ちを切り替えるように息を吐き出した。
「最後のダンスも頑張らなくちゃ」
自分を励ますようにそう言って、王宮に向かって歩き出した時、背後から誰かが近づく音が聞こえた。