寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 シャルル公爵は、礼を取る姿勢で腰を下げる。
 なかなか大げさな仕草に、セレナは顔をしかめそうになるのを堪えた。
 テオとアリスの親密ぶりを伝えたいのだろうが、あまりにも露骨すぎる言葉に、セレナは傷つくどころか逆に冷静さを取り戻した。

「そうですか。舞踏会の招待客は、国王陛下がお決めになるので、私はそのような事は知りません」

 セレナは、騎士たちを脇に下がらせ、凛とした口調で答えた。
 立ち姿といい表情といい、テオのことで悩み弱々しい姿でバラを愛でていたのが嘘のようにしっかりしている。
 王太子妃としての自信を表情と声に乗せて、言葉を続けた。

「アリス嬢がどのような方か知りませんが、私が心地よく思えない存在だというのなら、今後も王家主催のどのようなものにも招待されないよう、陛下に申し上げておきます」
「は……なんだと……いえ、どういうことですか」

 セレナの迷いのない言葉に、シャルル公爵が気色ばむ。
 セレナの前に立ち、距離を縮めようとするが、騎士たちがセレナの横に立ち、それを阻む。
 それを見たシャルル公爵は、落ち着こうと一度息を吐き出した。

「セレナ様、娘は王太子殿下のお気に入りで、それはもう、大切にしていただいております」

 シャルル公爵の言葉を聞いて、彼の傍らに控えていた従者たちが慌てて彼を制するが、シャルル公爵はそれを振り払った。

「娘は、テオ王子と別れただけでなく、テオ王子が娘の幸せを想って用意した伯爵家との縁談を泣く泣く受けたというのに……。結局、テオ王子は我が国の王太子となり、娘以外の女性と結婚されました。それがミノワスターに水路を作るための、国益に基づく結婚だとはいえ、やはり娘は悲しんでおります」
 
 悲しみをこらえるような声に、セレナの心がチクリと痛んだが、セレナをにらみつける瞳に浮かぶ悔しさを見れば、結局、娘を王太子妃にしたかったがうまく事が進まなかった愚痴を言っているだけだと聞き流す。
 

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