寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「本来ならカルロ王子が我が国の次期王となるはずが……水路と引き換えにしてまでランナケルドの王配に据えて、クラリーチェ王女を守ろうとなさるとは。ランナケルドの国王の親バカにもほどがある。クラリーチェ王女が安泰なら、セレナ様のお相手を簡単に代えて他国に嫁がせても平気だとは」

 感情にまかせて唸るようにそう言ったシャルル公爵は、自分の言葉の悪意にハッと気づいたように目を見開いた。
 居心地の悪さを覚えたのか、「いや、それは、その……」と口ごもる。
 アリスがテオと結婚できなかった事が悔しく興奮してしまったが、彼もここまではっきりとセレナを傷つける言葉を口にするつもりはなかったのだ。
 しかし、凛とした態度を崩さないセレナの佇まいにイラつき、思わず厳しい言葉が口をついて出た。
 セレナは表情を無くしたまま、その場に立ち尽くしている。
 テオとアリスの関係をにおわされた時には、その思いがけない衝撃に心は揺れたが、それ以上に彼女の心を傷つけたのは、ランナケルドの国王でありセレナの父がミノワスターに水路を作ってでもカルロ王子をクラリーチェと結婚させようとしたことだ。
 真面目に公務にあたり、何があっても落ち着きを失わないカルロなら、体力に不安があるクラリーチェをしっかりと支えてくれるだろうと考えるのは自然なこと。
 たとえカルロがセレナの婚約者だったとしても、それは関係のないことだ。
 それどころか、セレナが他国に嫁ぐことにも、結婚相手が国王の器ではないと言われているテオだとしても、気にすることはなかった。
 そう、ひたすらクラリーチェの行く末を優先し、セレナの未来を思いやることはなかった。
 どこまでもクラリーチェを優先しセレナを顧みない父と母に、今更傷つけられるとは、セレナは思ってもみなかった。
 ミノワスターでの新しい生活の中で忘れようとしていた悲しい想いが、シャルル公爵の言葉によって再び息を吹き返す。

「セレナ様……」
 エミリが不安げにセレナの傍らに立った時、突然周囲が慌ただしくなった。

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