寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「殿下、私は大丈夫です。シャルル公爵は、私たちの結婚の理由やテオ殿下のこれまでのお楽しみを教えてくださっただけですから」
セレナは体をもぞもぞと動かして、強張ったテオの顔を撫でた。
それまで胸に広がっていた苦しみが、あっという間に消えていく。
水路を確保するための結婚だったと言われて傷ついた心も癒される。
テオの体温がセレナの強張った体を徐々にほぐし、彼女の口からは冗談交じりの言葉すら出る。
「そんな怖い顔をなさらないでください。女性たちから大人気の、あ、アリス様も殿下に夢中だったんですよね。そのお顔が台無しです」
「は? アリス? どうして彼女が関係するんだ?」
テオはシャルル公爵を再び睨んだ。
「余計なことを……」
シャルル公爵は、テオの声に息を詰めた。
「も、申し訳ございません」
「俺とアリスはなんでもないぞ。互いに周りの声が面倒で一緒にいただけで……それに、彼女はサウス伯爵との結婚が決まっているだろう」
「……なんでもない?」
テオの言葉に、セレナが反応した。
「そうだ、誤解するなよ。俺はアリスとは何でもないし、そもそもあんなじゃじゃ馬、まるでクラリーチェみたいで俺には無理だ……」
「え、クラリーチェって……」
テオがため息とともに口にした名前を、セレナは繰り返した。
「いや、なんでもない。それより、とにかく俺はアリスとはなんでもないから誤解するなよ」
「あ……はい。でも、ずっと仲が良かったと聞いて……」
セレナの言葉にテオは天を仰いだ。