寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「シャルル公爵にとって、サウス伯爵はいい手駒になると思うぞ。貴族としてはさほど身分が高いわけではないが、頭はいい。そなたに似て腹黒く要領もいい。それに、王太子である俺とは子供の頃からの付き合いで騎士団でも団長と副団長を務めた仲だから、俺にも平気で意見してくる。アリスを想う気持ちは驚くほど強いが、俺にはそれが理解できない……。まあ、人の好みはそれぞれだからな」
テオはそこで口を閉じ、くっと笑った。
そして、気持ちを切り替えるように呼吸を整えた。
「水路完成を祝う日に、これ以上の面倒はごめんだ。シャルル公爵の暴言は、娘の幸せを想う父の戯言だと聞き流すことにする」
「ありがとうございます」
シャルル公爵は、再び頭を下げた。
シャルル公爵を子供の頃からよく知っているテオは、彼のアリスへの愛情もよく知っている。
今回も、その気持ちゆえの暴走だとわかっているのだ。
「それと、さっきちらりと耳に入ったがアリスを舞踏会に招待しなかったのは、セレナを気遣っての事ではないぞ」
「そ、それでは何故……」
「愛するオトコとの結婚が決まった今、アリスは舞踏会なんてものに興味がないんだ。作り笑顔と腹の探り合いばかりの宴は華やかだが棘も多い」
テオは腕の中に閉じ込めたままのセレナにふっと笑いかけると、視線を傍らで咲いているバラに向けた。
「豪華で艶やかで、夢のような時間だが、棘を隠した花に蹴落とされないよう気持ちを張り詰めた世界はもうごめんらしい。アリスは、いつも俺の隣で毅然としていたが、それは本当に欲しい者を手に入れるために、無理してそうしていただけだ。