寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
言葉ひとつ振る舞いひとつで傷つけられるかもしれない舞踏会になど、もう行く必要はないと言って、二度と招待状は送るなと言われたんだ。王太子にそこまで言えるなんて、女にしておくのはもったいないな」
アリスの想い人であるサウス伯爵との結婚が無事に決まり、誇らしげに笑う彼女は、カルロとの結婚が正式に決まった時のクラリーチェとよく似ていた。
立場も周囲の期待も関係なく、愛するオトコを手に入れるため慎重に事を進める強さはふたりに共通していた。
そんな彼女たちの踏ん張りを近くで見ていたおかげで、テオもセレナとの結婚を信じ続けることができたのだ。
アリスがテオの側妃の座を狙っているという噂が広まっていたにも関わらず、ふたりで晩餐会などに出席していたのは、彼女に有力貴族から結婚の申し込みがないようにするためだった。
アリスの結婚を利用し、トルノー家の更なる繁栄を目論んでいたシャルル公爵が彼女への縁談の話を受けないようにするため、アリスはテオの側にいたのだ。
テオにとっても、セレナと結婚するための計画を慎重に進めている最中だ、公爵家の娘との噂があれば、他の女性からの面倒なアプローチも減るだろうと考えた。
それは思いのほか功を奏し、テオに取り入ろうとする女性はほぼいなくなった。
そしてセレナは以前から想いを寄せ合っていたサウス伯爵との関係を深めていた。
その後、ミノワスターの王太子となったテオはセレナと結婚し、生涯側妃は必要ないと宣言。
シャルル公爵の混乱と憤りはすさまじいものだったが、相手は王族だ、簡単に異を唱えることもできず、その鬱憤はセレナに向けられるようになった。
一方、その慌ただしさの中でサウス伯爵から求婚されたアリスは、申し出を即承諾した。
テオと旧知の間柄であり子供の頃から面識があったサウス伯爵の結婚に、国王夫妻も喜んでいるとなれば、シャルル公爵も認めざるを得なかった。
公爵家より身分が低い伯爵家の人間だとしても、国王夫妻が後押しする縁談となれば、シャルル公爵も断れないのだ。
それらはすべてテオとアリスの計画によるもので、アリスは今、愛する人との結婚が決まり、幸せな時間を過ごしている。