寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
テオの言葉通り、ふたりはラストダンスを終えた後、招待客への挨拶を早々に済ませ、部屋に戻った。
侍女たちによってドレスを脱がされ、湯あみを終えた時にはさすがにセレナの体はくたくただった。
ベッドに腰をおろしたと同時に眠気を覚えたが、セレナより早く湯あみを終えていたテオが、飲み物を手にセレナの隣に腰かけた。
エミリが気を利かせて用意してくれたバラが湯に浮かんでいたおかげで、今も互いの体からはバラの香りが広がっている。
一緒に湯に入ろうとテオに言われたが、恥ずかしくて全力で断ったことを思い出し、セレナの眠気は吹き飛んだ。
「どうした?」
もぞもぞ落ち着かないセレナに、テオは手にしていたグラスを掲げて見せた。
淡い紫色の飲み物が、小さく揺れている。
「ランナケルド特産のワインだ。クラリーチェが土産に持ってきてくれたらしい。さっき兄さんが持ってきてくれたが、うまいな」
「ランナケルドの……あ、私、飲んだ事がないんです」
「ああ、クラリーチェも最近ようやく飲んだらしいぞ。病弱だからと酒は禁止されていたそうだが、意外に酒に強くて国王夫妻を驚かせたそうだ」
「……そうですか」
セレナは力なく笑った。
ランナケルドでは十六歳になれば飲酒できるのだが、飲酒を禁止されているクラリーチェに気を遣い、セレナも飲まずに過ごしていた。
特産のワインはおいしいと評判で興味はあったが、クラリーチェにならい、我慢していたのだ。
しかし、セレナが嫁いだ後、早速、家族三人でワインを飲んだと聞けば、さすがに切ない。
それに、ランナケルドでは、家族でワインを飲む事には特別な意味がある。
ふとその事を思い出し、同時に相変わらずクラリーチェを溺愛している両親の姿が目に浮かんで苦しくなる。
強張った表情でため息を吐いた彼女を、テオが切なげな瞳で見つめた。