寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「あ、ごめんなさい。ちょっとぼんやりしてしまいました」
明るい表情をテオに向けると、セレナは落ち込んだ気持ちを隠すように肩をすくめた。
「ランナケルドのワインは、なかなか手に入らない貴重なものなんですよ。ミケーレなんて、毎年ワイン農家でぶどうの収穫の手伝いをする代わりにワインを譲ってもらってますからね。いっそ農家の娘さんと結婚しようかって本気で言ってましたし」
くすくす笑うセレナの唇はかすかに震えている。
子供の頃からの寂しさを思い出したのだろうと、テオの胸は痛んだ。
「ミケーレか。あの男ならそれくらいやりそうだな。……そう言えば、このワインは市でも人気らしいな」
セレナに特別な想いを抱いているミケーレの名前が出た途端、テオは顔をしかめたが、今はそれどころではないと自分に言い聞かせ、話題を変えた。
「そうですね。人気も人気で、ワイン農家の方が商品を並べた途端すぐに売り切れるんです」
「だったら、このワインは本当に貴重だな。何本かもらったから、ふたりで飲もう」
明るい声を上げるテオに、セレナは曖昧に頷いた。
「ん? 飲みたくないのか?」
「ううん……そうじゃないんですけど。ワインもですけど、お酒をしっかりと飲んだことがないから、どうなるのかなと思って」
クラリーチェが意外に強いのなら、自分も案外飲めるかもしれないと思いつつ、不安もある。
シャンパンを少し飲んだだけで身体が熱くなったほどだ、ワインを飲んだらどうなるだろう。
「殿下は、お酒には強いんですか?」
「ああ。あまり酔わないな」
「そうですか。私も、酔わないといいんですけど」
か細い声で呟いたセレナに、テオはニヤリと笑った。
「酒に弱いのも、かわいいけどな。……じゃ、早速試してみるか」
テオはセレナの肩を抱き寄せ、緊張しているセレナの顔を覗き込む。
「ワインも、セレナの初めてなんだな。俺が初めてを全部もらってるんだな」
「……そう、ですね」
テオの言葉の裏にあるあれこれを感じて、セレナの体は熱を帯びた。