寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
テオの鼓動を耳に直接感じながら、ふわふわした感覚に浸る。
「私が生まれた時は、お姉様の体調が相当悪かったらしくて、ワインは用意されなかったと……。聞いています」
「その事は、クラリーチェから聞いた」
「そうですか……」
王家に生まれたというのに、祝いの儀式も執り行われず、周辺国からの祝いの品もすべて断ったという。
クラリーチェの命を守ることを最優先に考え、王宮で働く者すべてがクラリーチェのために動いていた。
そんな中で生まれたのは王女だった。
王子が生まれたならば次期王として盛大に祝ったのだろうが、生まれたのが王女なら、クラリーチェが背負う重責に変わりはない。
必要最低限の世話をする女官と侍女にセレナを任せ、国王夫妻はクラリーチェにかかりきりだった。
もちろん、セレナのためにワインが用意される事はなかった。
娘が生まれた時にワインを用意するという習慣をセレナが知ったのは、離宮で働く女官が結婚し、娘が生まれた時だ。
その年はブドウが豊作で、出産を終えた女官は良いワインをたくさん用意できたと言って喜んでいた。
セレナは自分のためのワインはあるのかとアメリアに尋ねたが、用意していないと教えられた。
『そうなんだ、仕方ないね』
クラリーチェの命の方が大切だからと自分に言い聞かせ、大したことではないと思い込もうとしたが、両親の愛情の希薄さを思い知らされたようで、悲しかった。
滅多な事では泣かないセレナだが、その晩、離宮にある自分のベッドの中で声を殺して泣いた。