寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
それ以来、ワインを見るたび苦しくなり、飲酒できる年になっても飲む気にはなれなかった。
飲みたくても飲めないクラリーチェの事を気遣って飲まないのだと言い訳しているが、実際はセレナが両親との間に見えない壁を作ったきっかけともいえるワインを、飲むことも見ることも、嫌で嫌でたまらないのだ。
「だけど、ワインって、こんなにおいしいんだ。知らなかった……」
体をもぞもぞと動かし、セレナはテオの胸にいっそう体を押し付けた。
居心地の良い姿勢を探し、すっぽりと収まる。
そして、自然な動きで両手をテオの背中に回し、ぎゅっとしがみついた。
「おそろいのバラの香りが、嬉しい。今日も、殿下が摘んできたの?」
目を閉じ、子供のような口調で話すセレナの顔を、テオが覗き込んだ。
「残念ながら、今日のバラはラーラが……ん? 寝てる? 酔ったのか……?」
テオは頬を緩め、セレナの背中を何度も撫でる。
侍女に着せられた、少々布が少なめのナイトドレスから伸びた綺麗な脚が目に毒だ。
テオは傍らにあったガウンをセレナの体にかけた。
すると、セレナは居心地が悪そうに体を動かした。
「熱いから、何もいりません」
「起きてるのか?」
目を閉じたまま、セレナが口を開く。
「湯あみでのぼせたのか、体が熱いです。それに、ふわふわして気持ちがいいです。さっきまで、アリス嬢とテオのことでもやもやしてたのが嘘みたい。それに、テオがお姉様をじーっと見ていたから苦しかったのに……」
「……だからアリスとはなんでもないし……ん? クラリーチェ? あまりにもダンスが下手で笑いそうになるのを堪えてたけど、別にじっと見ていたわけじゃないぞ。……聞いてないか」
セレナはワインを一口飲んだだけで酔ったらしい。
穏やかな表情を浮かべ、いつの間にか規則正しい寝息も聞こえてくる。