寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 テオはセレナの頬にかかった髪をそっと梳いた。
 朝から式典に参加し、晩餐会、舞踏会と続いた長い一日にセレナは疲れきっている。
 新しい生活の緊張感はかなりのもので、頼るべきテオ自身も急遽始まった王太子教育と公務に追われている。
 セレナは戸惑いや不安をひとりで抱え、誰にも甘える事ができずにいる。
 そんなセレナの状況を気にしながらも、テオがセレナとゆっくり会えるのは夜だけで、会えば抱き寄せ、体を重ねる事に夢中になり夜明けを迎えている。

「セレナ……」

 日々ラーラから聞かされるセレナの忙しさや頑張りをねぎらうことなく抱き合うばかりで、テオは彼女の不安も何もかもを後回しにしてきた。
 テオは自分の胸にしがみつき、ホッとしたように眠るセレナが愛しくてたまらない。
 同時に、忙しいせいか少し細くなった体に切なさも覚える。
 初めて会った時に感じた庇護欲はそのまま愛情に変わり、独占欲はいっそう強いものになった。
 自分の欲を表に出さず曖昧にやり過ごすことが得意だと見せて生きてきたが、それはすべてセレナを手に入れるための演技だった。
 セレナと結婚するためカルロとクラリーチェと企てた計画が実を結び、こうして手に入れたセレナという宝を守るためなら、何をも厭わない。
 本来のテオは、感情の振り幅が大きく、欲しいものを確実に得るために全力で突き進む熱い男だ。
 婚約者であるクラリーチェのご機嫌伺いという建前のもと、何度もランナケルドに足を運び、その都度セレナと過ごした。
 体調が芳しくないクラリーチェに代わってテオの相手をするセレナから自分への恋心を確認しては、願いが叶うかどうかと不安になる気持ちを鎮め、焦る気持ちをやり過ごした。
 大丈夫、セレナは俺を愛している。
 セレナからにじみ出る恋心を励みに、テオはクラリーチェの婚約者を飄々と演じ続けた。


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