寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
クラリーチェが生まれつき病弱であるのは嘘ではないが、成長するにつれて体力がつき寝込むことはなくなっていた。
テオとの婚約が調う頃には、セレナと共に公務をこなす機会も徐々に増え、周囲を安心させていた。
病弱だという事で気弱な印象を持たれがちなクラリーチェだが、本来の彼女はかなり気が強く負けず嫌いだ。
心配し過ぎる国王夫妻のせいで、いずれ女王として国を率いるための勉強も十分させてもらえず、セレナのように騎士団に交じるなどはやりすぎだが、自らを鍛えることもできない。
部屋に閉じ込められ、医者の監視のもとでの生活は窮屈だったが、とにかく健康を手に入れて、女王としての役割をしっかり果たそうと思っていた。
そして、ようやく体調が調い、城の庭をのんびりと散歩できるようになった頃、クラリーチェとセレナはミノワスターの王子たちとの婚約を決められたのだ。
当時まだ十二歳だったにもかかわらず、国益につながる政略結婚を覚悟していたクラリーチェは、テオが婚約者だと聞かされても何も感じなかった。
誰が相手だとしても、ランナケルドの更なる発展のために尽力していくだけだと冷静に考えていた彼女にとって、テオは都合のいい隣国の王子という印象しか持てなかった。
しかし、テオの兄であるカルロをひと目見た途端、彼女の心は激しく揺れた。
正装していても筋肉質だとわかる体から溢れる生きる力のようなものと、まっすぐクラリーチェを見る瞳の落ち着きに、クラリーチェの体は動きを止めた。
心臓だけがばくばくと動き、カルロと合わせた視線を自ら逸らすことはできなかった。
そう、一目ぼれだ。
カルロも、華奢な体に強気な心をひっそりと隠しているとわかるクラリーチェに目を奪われた。
一瞬のことだった。
けれど、婚約者として告げられた名前は、互いの名前ではなかった。
やはり、自分たちは国のためにのみ生きるしかないのかと絶望に似た想いを隠そうとした時、テオがカルロに囁いた。
『俺にセレナをちょうだい』