寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



 翌朝、王宮に泊まった招待客らが順に城を後にする。
 豪奢な馬車が次々と城門を抜ける様子は煌びやかで、領民たちが街道から少し離れた場所から眺めるのもよくある光景だ。
 その中でも、シャルル公爵が揺られている四頭立ての馬車はかなり目立っていた。
 白地に金の模様が施された外装はまぶしいほどだ。
 王家専用の馬車よりも派手な装飾は国内でも有名で、それを見たいがために城の近くに集まる領民は多い。
 シャルル公爵はそれがわかっていて、領民たちがゆっくりと見られるよう馬のスピードを落とすよう御者に命じている。
 これまで水不足が慢性化していたミノワスターでは、農業に従事する者の苦労はかなりのもので、税の免除などがあるにしても、農家をやめて商売を始める者も多かった。
 だが、国の食糧を確保するためには農家を潰すわけにはいかない。
 シャルル公爵も、領内の農民たちのため、定期的に視察をしたり医師を派遣したり、農民の暮らしが少しでも良くなるよう働いている。
 公爵家の当主という立場を考えれば珍しいことだが、当主みずから領民を思い動かねばその立場はたちまち危ういものになるのだ。
 今揺られている豪華な馬車も、領民たちがそれを見て楽しんでもらえるようにと、派手な外装を施しているのだ。
 シャルル公爵が乗っているとわかれば彼の命を狙う者には好都合であり、警備についている騎士たちの数も多いが、見た目が整ったたくましい騎士たちが整然と守っている様子も領民たちにとっては、とくに若い女性にとっては夢のような世界で、日々忙しく仕事に励む彼女たちの特別な時間となっている。
 今も街道沿いには若い女性たちが並び、馬に乗って通り過ぎる騎士たちを見つめている。
 シャルル公爵も若い頃は騎士団長を務め、父であり当時の公爵の乗る馬車を警護したものだ。
 そして、沿道にその姿を見に来ていた女性に一目ぼれをした結果、今も尚幸せが続く結婚へとつながった。
 そんな、自分が幸せを手に入れた過去の経験から、今もゆっくりと馬車を進め、女性と出会う機会が少ない騎士たちを従わせているのだ。
 公爵として辣腕をふるう狡猾さはもちろん持っているが、恰幅の良い体形と強面の顔からは想像できない優しさも持ち合わせている公爵を慕う騎士たちは多い。
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