寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
水路が順調に機能し始めてそろそろ一か月。
ミノワスターの人々の生活は少しずつ潤い始めていた。
畑に水を流すための工事が順に行われ、土地の貯水力を高めるために広い範囲で植樹が進められている。
豊かな水資源のおかげで生活が改善され、国民の士気も上がった。
貴重な鉱物資源に恵まれ、その採掘事業を中心に繁栄しているミノワスターだが、やはり水がなければ国民の生命が脅かされる。
生活の基盤ともいえる水資源を豊かにすることは、ミノワスター建国以来の悲願だった。
士気が上がると同時に国民のセレナへの感謝の想いも大きくなっている。
子供の頃からミノワスターに頻繁に訪れ、国民たちから慕われていたが、クラリーチェのためにと急遽結婚相手が変えられても不満ひとつ口にせずミノワスターに嫁いできてくれた。
水路という素晴らしい持参金とともに。
セレナの人気は以前とは比べ物にならないほど大きなものになっている。
城下に降りればたちまち人が集まり身動きが取れず、警護の騎士たち十人ほどで彼女をすっぽりと囲んだ中での移動しかできない。
結婚前は早馬に乗りあらゆる場所に出かけていたが、今の状況でそれはできない。
どこに行くにも馬車に乗り、騎士たちに守られながらの移動が続いている。
王城から少し離れた場所にある騎士学校での訓練に交じる事も許されず、結婚前のように体を鍛える機会はほぼなくなった。