寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「え、旅行ですか?」
「そう。旅行といってもそれほどゆっくりできないしアメリアが寂しがってるだろうから、ランナケルドの離宮でのんびりしないか?」
「……ランナケルドの離宮?」
結婚したばかりだというのに、里帰りなんてできるのだろうか。
「安心しろ。陛下に許可はもらってある」
セレナの戸惑いに、テオが笑顔で答えた。
庭に面したテラスで朝食を終え、テオはのんびりとコーヒーを飲んでいる。
王太子として忙しい毎日を過ごしているが、珍しく、今日の午前中はなんの予定も入っていない。
「あの……結婚してまだ間がないし……里帰りはまだ先の方が……」
コーヒーカップを両手で抱えて俯くセレナを、テオは訝し気に見つめた。
ランナケルドに行けると聞けば、喜ぶと思っていたのだ。
「遠慮するなよ? 結婚して一か月しか経ってないことが気になるのかもしれないが、兄さんとクラリーチェの結婚も近いから、祝いの品を持っていくという名目もあるし。セレナだって久しぶりに離宮でアメリアに会いたいだろ?」
「もちろん、会いたい……でも、大丈夫です」
セレナは自分に言い聞かせるように呟くと、テオに笑顔を向けた。
微かに揺れる瞳が翳っていることに、テオは気づく。
「クラリーチェに祝いの品を直接渡したくないのか? セレナが選んだシルクのナイトドレスの用意はできてるはずだし、会いたいだろ?」
素直にランナケルドに行きたいと言えばいいのにと、テオは苦笑する。
結婚し、王太子妃となってまだ一か月と少し。
早くの里帰りに遠慮するのはわかるが、国民たち同様、王族の者たちも両国を気兼ねなく行き来しているのだ。
セレナがランナケルドに行ったとしても、誰もそのことをとがめることはない。