寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 テオは続けてセレナにたたみかける。

「俺だって久しぶりにアメリアが焼いたパンを食べたい。アメリアも大喜びだぞ、きっと」

 向かいの席に座るセレナの顔を覗き込めば、彼女は気乗りがしないのか、曖昧に頷く。

「どうした? 行きたくないのか?」
「あ……違います……でも、やっぱりまだ大丈夫です。姉さんとカルロ王子の結婚式の時には行かなければならないですし、殿下もお忙しいですから、無理なさらないでください」
 
 セレナは小さい声ながらきっぱりと言い切った。
 アメリアには会いたいが、父と母に歓迎されるという確信が持てず、訪ねるのを躊躇しているのだ。

「最近は公務はかなり落ち着いてるんだけどな。……まあ、兄さんたちの結婚式の時にゆっくりと行けばいいか」
「はい。すみません、気を遣っていただいたのに」
「いや、気を遣ってるわけじゃなくて、俺がセレナとふたりでゆっくりしたいんだ。数日の休みを取っても大丈夫だと言われてるから……そうだ、だったら、こっそりとソフィアの屋敷にでも行くか」
 
 テオは近場に変更してでもセレナを城から連れ出して、ふたりで仲良く過ごそうと思っていた。

「ソフィアもセレナのことは気にいってるようだし、自慢の庭を見せたいから遊びに来いって言ってたな。うん、そうしよう」
「自慢の庭?」

 ランナケルドに行くことに消極的だったセレナが、身を乗り出して反応した。

「でも、いいんでしょうか? あの、突然行っても」

 その声からできれば行ってみたいというセレナの気持ちがわかり、テオは口元を緩めた。

「ソフィアなら大丈夫だ。最近は庭だけでなく子供自慢もすごいけど、まあ、あの屋敷はにぎやかで楽しいぞ」

< 207 / 284 >

この作品をシェア

pagetop