寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
テオとセレナの公務の調整と、警備の段取りを調えたのはそれから五日後だった。
元王族とはいえ、民間に嫁いだソフィアの屋敷に泊まるためには、それなりに準備が必要だったのだ。
結局、ソフィアの嫁ぎ先であるシズール家に迷惑がかからないよう、周囲には知らせず一泊のみの滞在となった。
王家専用の馬車ではなく、シズール家の紋章が施された小さな馬車でテオとセレナがシズール家の屋敷に到着したのは昼食時だった。
シズール家の当主アレック伯爵は、温和な笑顔が魅力的な紳士で、妻のマギーと共にふたりを歓迎した。
国王の姪であるソフィアを嫁として迎え入れて以来、王家とのかかわりが深くなったが、だからといって特別な待遇を求めるわけでもなく、国王に取り入るわけでもない。
テオとセレナを前にしても、普段と変わらずにこやかにふたりを食堂に案内した。
「王城から近いとはいっても、お疲れでしょう。王家の馬車と違って我が家の馬車は小さくて座り心地も悪いですからね」
ハハハと笑ったアレック伯爵は「馬車だけでなく屋敷も小さいですし、調度品もなかなか手入れが行き届いてないんですが、客間は念入りに掃除をしてシーツも新しいものを用意しておりますのでのんびりしてくださいませ」と続けた。
代々学者としての生活を続ける貴族。
それはミノワスターでも珍しいのだが、建国当初、病に倒れた国王を、医術の知識があったシズール家の当主が薬湯を用意し救った事から伯爵の称号を得たと聞けば、納得できる。
貴族の仲間入りをし、土地と屋敷も与えられたが、シズール家はその後も堅実に学び、質素な暮らしを続けている。
屋敷の大きさや使用人の数を気にせず、たとえ王族が相手でも見栄を張る事なく普段通りに接する。
もともと王族としての意識が低く、自立した生き方を模索していたソフィアにとって、シズール家は居心地がよく、義父や義母とも仲良く暮らしている。
もちろん、夫であるウィルとは相思相愛の夫婦だ。