寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「セレナ様?」
黙り込んだセレナの顔を、ソフィアが覗き込んだ。
「お疲れでしたらウィルが調合したお茶がありますよ。疲れをとって肌に潤いを与えるらしいんですけど、これがまたおいしくなくて……あ、すみません。これを言ったら叱られちゃいます」
ソフィアは肩をすくめて笑い、テオと植物の鉢を見ながら話しているウィルに視線を向けた。
「大切な人を想って育てた茶葉なんだから文句を言わずに飲みなさいっていつも言われるんです。でも、まずいものはまずいから文句も出ますよね。どうせ研究するならおいしくて体にいいものを育てて欲しいって言ってるんですけどなかなか難しいみたいです」
喉の奥でくすくす笑うソフィアは、文句を言いながらも楽しそうで、嫌々ながらもお茶を飲んでいるという。
結局、旦那様が育てたお茶は特別なものらしい。
「あ、お父様とお母様のお料理はとてもおいしいので安心してくださいね。腕のいい料理人がいるのに、競うように作るのでキッチンはいつも賑やかなんです。さっき覗いてきましたけど、採れたてのキャベツを使ったスープのいい匂いがしてました」
「わあ、楽しみです。キャベツのスープはランナケルドでアメリアがよく作ってくれました」
「ふふ。そのことは既に調査済みです。こちらに来ていただくことになって、アメリアさんにセレナ様の好物を伺いに行ったんですよ」
「え、そんな、わざわざ……」
「大したことではありません。ランナケルドは近いですからしょっちゅう行きますし。ミノワスターとの国境の検問もないも同然ですからね。まあ、あちらにミノワスターの騎士たちが常駐してますから、他国という気がしませんけど」
ソフィアはにっこりと笑うと、「セレナ様がミノワスターに嫁いで来られたことでいっそう絆も深まりましたね」と呟いた。
その後ふたりは豊かな日差しが溢れる庭に出た。
緑眩しい芝生の片隅のテーブルにはお茶の用意がされていた。
「これはまずいお茶ではないので安心してください。アメリアさんにいただいたハーブティーです」
「……ありがとう」