寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナが結婚した後、アメリアはクラリーチェの結婚の準備を手伝っている。
そして、セレナの警護を担当していたミケーレも、今ではクラリーチェを警護している。
それをテオから聞いた時、セレナは何事もないように振るまっていたが、少なからずショックを受けていた。
両親の愛情が薄かった分、アメリアがセレナをかわいがり、そして、王城を抜け出す事が多かったセレナの身を守り、彼女に安心感を与えてくれたミケーレ。
セレナにとって特別な存在だったふたりは、今ではクラリーチェのために力を尽くしている。
仕方のない事だとわかっていても、誰よりもセレナを可愛がってくれていたふたりをクラリーチェに取られたようで、苦しいのだ。
セレナが望んでも得られなかった両親からの愛情だけでなく、セレナを無条件に愛してくれ、守ってくれた大切なふたりまでもがクラリーチェのものになってしまった。
それは単なる嫉妬でありセレナのわがままだとわかっていても、簡単に受け流せるほどセレナは強くない。
アメリアの力強い笑顔とミケーレの人をからかうような声を思い出して、セレナは切なくなる。
「クラリーチェ様はセレナ様が嫁がれた後、乗馬の練習もされているらしいですよ。ミノワスターで国民に慕われているセレナ様に刺激されたそうです。なかなか筋がいいらしいですが、国王陛下は心配でたまらないみたいです。もちろん、カルロ王子も落馬しないかとひやひやしていると聞いています」
弾んだ声で話すソフィアに、セレナは強張った笑顔を作った。
クラリーチェが元気になった事は知っているが、乗馬を始めているとは聞いていなかった。
病弱なクラリーチェを助けるために自らが女王になろうと決め、乗馬も剣の鍛錬も頑張ってきたが、結局それは必要なかった。
何がどうであれ、次の女王はクラリーチェであり、変わる事はなかった。
「……お姉様は、小さな頃は馬に乗ったり庭を走り回ったり……そんな時期もあったんです。むしろ私よりも活発でした。だけど、どんどん体が弱って寝込むことが多くなって……」