寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「あ……あの、それは、どうも……」
 早口で声高に話すアリスに、セレナは気圧される。
「アリス、セレナ様が驚かれてます。誰とでも初対面から気負わず話せるのは長所ですが、相手にとっては迷惑な事も多いといつも言ってるでしょ。そんな事で、伯爵家の嫁は務まりませんよ。公爵家と違って誰もがちやほやしてくれるわけではないし敵も多いはずです」
 
 ソフィアはそこでひと息つくが、再び口を開いた。

「ほんとにもう、いつも思いついたことをすぐ口にするんだから。公爵様のことをあれこれ言ってる場合じゃないですからね。ほら、テオ殿下が怖い顔をしてやってきましたよ……あーあ、私は知りません」
 
 庭に向けられたソフィアの視線をたどれば、ウィルと話をしていたはずのテオが、怒りを露わにズンズンとセレナ達のもとへやってきた。

「面倒くさい男で悪かったな」
「うわっ、地獄耳」
「は? 俺のどこが面倒くさいんだ? セレナと結婚するためにあれこれ動いたけど、アリスだってはた迷惑なくらい必死だっただろ」

 テオはアリスの前に立つと、セレナの体を抱き寄せた。

「余計な事は言うなよ。セレナは何も知らないんだからな……」
「余計なことは言ってませんから安心してください。だけど、テオ殿下がセレナ様の事が大好きで大好きで、長い間ずーっと大切に想ってきた事は言っておこうかと思いましたけどね」
「そ、それが余計な事だっていうんだよ。俺が自分で言うから黙ってろ。セレナもアリスとは無理して会わなくていいぞ。悪い奴じゃないが、付き合う必要もない」
「ひっどーい。私のおかげでテオ殿下の顔と地位だけに惹かれて近寄ってくる貴族のお嬢様たちから逃げられたのに」
 
 アリスはテオとの距離を詰め、唇を尖らせた。

「それはお互い様だろ。俺と一緒にいたおかげでやっかいな見合いから逃げられただろ。感謝しろ」

 アリスに負けじと言い返すテオの横顔に、セレナは瞬きを繰り返す。
 テオからアリスとは何もなかったということは聞いていたが、ここまで気を遣わない関係だとは思わなかった。
 互いに何を言っても大丈夫だとわかりあっているような気安さが見え、セレナはじっと耳を傾ける。

「ほんと、ぶれない男よね。セレナ様が欲しいからってカルロ王子も巻き込んで……」
「うるさい、それが余計なことだって言うんだ」
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