寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 その日、アリスはランチを共にした後帰っていった。
 ソフィアの屋敷の近くの大通りには多くの店が並んでいて、アリスは買い物に来るたびこの屋敷に立ち寄っている。
 結婚を間近に控え、その頻度も高くなっているが、たまたまセレナと会えた今日は、かなり興奮していた。

「クラリーチェ様のご結婚ももうすぐですね。セレナ様はどのような衣装で出席されるんですか?」

 興味津々といった口調で、ソフィアはセレナに問いかけた。
 伯爵夫妻ご自慢の料理を堪能した後、セレナとソフィアは庭で紅茶を飲んでいる。
 夫たちは庭の奥にある池で育てている新種の魚を観察に行った。
 テオとアリスの噂をセレナが気にしていると察したソフィアは、ことさら明るい言葉を口にするが、セレナの気持ちは落ち込んだままだ。
 テオとアリスには特に何の関係もないと伝えているが、やはり自分の夫が自分以外の女性と噂になるのはいやだろう。
 それでなくとも結婚してすぐの慌ただしさも落ち着き、母国ランナケルドに帰りたい頃だ。
 気持ちが不安定なのも仕方がない。
 セレナと両親との関係を知らないソフィアは、セレナがホームシックにかかっているのだと考え、彼女をかわいそうに思った。
 本来なら自分も他国に降嫁するべきだった身だ。
 目の前で切なげに俯くセレナが過去の自分と重なり、不憫で仕方がない。
 そうはいってもセレナは自分とは比べ物にならないほど優秀だ。
 女性としての当然のたしなみと言われている刺繍の腕前もかなりのもの、ランナケルドだけでなく、ミノワスターの歴史についても学者並み。
 見た目も麗しく、子供の頃からカルロという婚約者がいるにも関わらず他国の王族から縁談の話が絶えなかったと聞く。
 おまけに運動神経もよく、警護の騎士たちと早馬を乗りこなす姿は颯爽としていて恰好いいと噂だ。
 王女特有のわがままや自我の強さを感じさせない性格は誰からも好かれているとなれば、非の打ちどころはない。

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