寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「今まで水は貴重でなかなか自由に使えなかったからな。元気でいるうちに存分に楽しみたいんだよ。セレナのようなよくできた王太子妃に恵まれたうえにミノワスターに豊かな水路ができた。夢のようだな」
 
 うんうんと頷き、リナルドはセレナににっこりと笑った。

「これまで、ランナケルドでは当たり前にできる事が、ミノワスターでは難しかったんだよ。水はまず飲料用に使わなくてはならないから水遊びなんてできるわけがないし、湯あみも必要最低限の水を分け合ってしていたんだ。いい年をした私でさえこの調子だ、子供たちはもっと喜んでいるはずだ」
 
 感慨深げに話すリナルドの表情は、楽しみにしていたおもちゃを手に入れた子供のようだ。
 セレナはリナルドの言葉に軽い衝撃を受けていた。
 ミノワスターは常に水不足という問題を抱えていると知っていたが、国王でさえ湯あみに気を遣っていたとは思ってもみなかったのだ。
 セレナは子供の頃から何度もミノワスターを訪れていたが、泊まる機会がなかったせいか、その事に気づかなかった。
 テオと結婚した後も、水不足を感じた事はなかった。
 もちろん、水路が開通し、ミノワスターの水不足が解決されたからだが、今まで水資源について深く考えたことはなかった。

「私……何も気づかなくて。ランナケルドにいた時と同じ感覚で生活していました」

 セレナはミノワスターの国民に寄り添う妃であろうと決めて嫁いだが、最も大切な事を見過ごしていたと感じた。
 食事の時にも、湯あみの時にも、そして庭の片隅に作ってもらったセレナ専用の花壇に水やりをする時でさえ、ランナケルドにいた時と意識も何も変わらなかった。

「ミノワスターでは、水が何より大切だと……わかっていたつもりでわかっていなくて。申し訳ありません」

 落ち込み、ポツリと呟いたセレナの言葉に、リナルドは柔らかな笑みを浮かべた。

「気づかなくて当然だ。ジェラルド国王はセレナがランナケルドにいた時と変わらない生活ができるようにと必死だったからな。ランナケルドの国王は親バカで有名だが、目の当たりにして感動したぞ」
「……え?」
「まあ、親バカというよりも要領が悪くて愛娘に素直になれないバカな父親だ」





< 228 / 284 >

この作品をシェア

pagetop