寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
肩を揺らして笑うリナルドに、セレナは眉を寄せた。
親バカだの素直になれないだの、自分の父親の事を言っているとは思えない。
それに、愛娘というのは誰のことだろうかと戸惑った。
愛された記憶がないセレナには、まさか自分がその愛娘だとはとうてい信じられない。
隣にいるテオを見れば、苦笑しながらもリナルドの言葉に納得しているようで、セレナの背中を優しく撫でた。
「ランナケルドの国王陛下が親バカだとすれば、ここにも親バカがふたりいるぞ」
「ふたり……?」
「ああ。出来が悪くて公務を避けていた俺を国王に据えるほどの親バカだ」
そう言ってわざとらしく溜息を吐いたテオに、それまで黙って話を聞いていたロザリーは顔をしかめた。
「出来が悪いなんて、とんでもないわよ。王家の宿命と家族としてのバランスを考えて無理をしていたことはわかってるもの。カルロが王太子としてふさわしいと思われるようにわざと頼りない王子を装っていたことは、お見通しよ」
普段物静かなロザリーが、きっぱりと言った。
今もリナルドの傍らに寄り添い、彼の容態を気にかけているが、テオに向ける表情は強い母そのものだ。
「カルロの事はもちろん愛しているわよ。親友の忘れ形見というだけでなく、大切な息子だとも思っているもの。ランナケルドに行ってしまうのが寂しくてたまらないし、できればこの国で一緒に暮らしたい……。だけど、それがカルロの望んでいる事じゃないから、諦めるけど……」
ロザリーは悔しそうに顔を歪めた。
カルロと離れる事に納得していても、やはり母としての寂しさは大きいのだ。
「仕方がないわよね。わが子の幸せを第一に考えるのが親のつとめ。そうよ、私はテオの母親だもの、何を考えているかなんてすぐにわかる。カルロが王太子として認められるよう、わざとおばかな王子になっちゃって、ほんとに優しい自慢の息子だわ」
「な、何を突然言い出すんだよ。そんなこと今まで何も言ってなかっただろ」
焦るテオに、ロザリーはくすりと笑った。