寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「痙攣を二度繰り返して、後遺症が残るのではないかと危惧されたんだ。国王夫妻は必死で看病し、その甲斐あってか三日目の朝には熱が下がって回復したそうだが、しばらくは言葉も出ないし歩くこともできないし、ちゃんと成長できるのかどうかわからないと医師から言われて。それ以来クラリーチェから目が離せなくなったそうだ」
「そう……。お姉様は、大きくなっても体調が落ち着かなくて、いつも部屋に閉じこもっていたけど、そんな事があったなんて知らなかった」
アメリアから聞いていた以上に大変だった過去に、セレナは驚いた。
幼いクラリーチェに命の危機が何度かあったと聞いてはいたが、セレナが具体的に聞いたのは初めてだ。
痙攣までおこし、後遺症も心配されていたとなれば、そのことがトラウマとなり、それ以後もクラリーチェにかかりきりになっても仕方がないかもしれない。
カルロとテオに対するロザリーの母としての想いを聞いたばかりのセレナは、自分の両親の想いもわかるような気がしたが、だからといって寂しすぎた子供時代を忘れられるわけではない。
「飲んでみろ。夕べもうまそうに飲んでいただろ……あまりにも弱くて笑ったけどな」
テオは、俯くセレナの顔を覗き込んだ。
「夕べ、陛下だけでなくヴァルターたち執事も何人か、一緒にワインを飲んだらしいぞ。セレナの幸せを願って用意されたワインだから、たくさんの人が笑顔で飲む方がいいんだよな?」
「あ、はい……。多くの人が、子供の明るく幸せな未来を願って飲むんです」
「ジェラルド国王は、その事でも頭を下げていたそうだ」
テオはセレナの肩を抱き寄せ、彼女の金色の髪に唇を落とした。
「セレナがミノワスターでは寂しい想いをしないよう、そしていつも心から笑っていられるよう、多くの人がワインを味わってくれるようにと何度もな……」
テオの言葉に、セレナは口をつぐんだ。
ワインを用意されていたことだけでも信じられずにいたセレナには、父が頭を下げる姿も想像できない。
セレナを気遣い、国王夫妻をはじめ、テオやヴァルターたち皆で優しい嘘をついているのではないかと思った。
そんなセレナの想いを察したテオは、彼女が口を開くよりも早く言葉を続けた。