寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「クラリーチェを、死なせるわけにはいかなかったって、わかってるんだよな。王家を守る騎士団とともに過ごしていれば、王位継承者は簡単に変えられないとわかってるんだよな」
テオの問いに、セレナはコクンと頷いた。
「騎士団に入団する時、国王と王位継承者を守ると誓わされるのは、どの国も同じ。つつがなく王位の継承が行われる事が国の安定の大前提だ」
「……わかってる」
正式に騎士団に入団したわけでなく、王女という立場を盾にして騎士団の鍛錬に交じっていただけのセレナでさえ、テオの言葉の重みは理解できた。
国の安定と平和を永きにわたり維持していくのは容易ではない。
近隣諸国とのいさかいもあれば、思いがけない天災にみまわれる場合もある。
それらを避けたり、最小限の被害に抑えて国民を守る努力をするのは当然だが、その事に力を注ぐためには王家の安定が必要なのだ。
国民のために集中しなければならない時に、王位に関する争いや分裂があれば、救えるものも救えないのだ。
水害や飢饉が起きた時、王家がまとまらず対応が遅れ、国民の命が危険にさらされるような事があってはならない。
だからこそ王家の和というものは大切で、王位継承を無事に終えなければならないのだ。
ランナケルドでは第一王子が王太子となるが、王子が産まれなかった場合は第一王女が王太子となる。
たとえ王太子となる者が病弱であってもそれを変えることは難しい。
どんな理由であれ、一度王位継承者の変更を認めてしまえば、それと同じ理由で後世でも継承者の変更が行われる可能性がある。
前例に沿って理由を挙げ、正当な王位継承者をその地位から引きずり下ろし、我が身に都合の良い者を王位に就かせようと考える者が現れる可能性も否定できない。
だからこそ王位継承者に例外は認めない、ということだ。