寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナがミノワスターに嫁ぐことは、十歳の時から決まっている。
国のため、仕方のないこと。
それに、婚約者である王太子カルロは国民からの人気も絶大で、ミノワスターは今後百年、カルロが作り上げるであろう政策によって明るいと、言われている。
婚約者であるセレナにも真摯な態度で接してくれる。
ほどよい距離間と礼儀をわきまえた態度に他人行儀なところはあれど、結婚してから親しくなっていけばいいとセレナは思っている。
セレナ自身、八歳年上のカルロに会っても何を話せばいいのかわからず、いつも黙り込んでしまう。
だから、互いに距離をとりながら誠実な関係を続けている方が気楽なのだ。
政略結婚なのだから、それは当然なのかもしれない。
カルロに対して恋心は抱いていないにしても、互いに信頼し合い、ミノワスターの発展のために力を尽くすことが、自分の役目だと、セレナは納得している。
王女が自分の感情を持つ事は許されないのだから。
「少し急ぎましょう。アメリアが焼いたパンだけは、売り切れるまでに手に入れたいの」
セレナは溢れる切なさを忘れるように明るい声を上げる。
明るい日差しと春が近いとわかる柔らかな風に身を任せながら、毎月楽しみにしている市へと意識を向けた。