寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
農作物の収穫にはまだ早い早春の露店には、食糧よりも手作りの品々や遠方から来た商人たちが店頭に並べる貴金属の方が多く、それを目当てにした女性たちで賑わっていた。
交易の場として栄えているランナケルドの東端。
王城からも近く、国境を接するミノワスターから警護のために派遣された騎士たちが大勢いる。
露店が並ぶ通りをゆっくりとしたスピードで馬を走らせるセレナに気づけば、ランナケルドだけでなくミノワスターの騎士たちも姿勢を正し、一礼する。
いずれ自国の王妃となることが決まっているセレナへの敬意とでもいうべきか。
というよりも、結婚前だというのに、ミノワスター国内でのセレナの人気はかなりのもので、カルロとの結婚を、今か今かと国民は待ちわびているのだ。
「セレナ様、おはようございます。これまでのところ、何も問題はありません」
「マーク、お疲れさま。わざわざ来てもらって悪いわね」
セレナは馬からひょいと降りると、露店を守っている騎士に礼を言った。
「い、いえ、とんでもございません。市の警備に任命されたいと、騎士の誰もが願っておりまして……」
「あら、そうなの? まあ、そうよね。おいしい食べ物をあちこちで買えるし、かわいいお嬢さんもたくさん来てるし。……誰か気に入った女の子がいれば、後押ししないこともないわよ?」
「いえ、そういう理由ではなく……セレナ様にお会いできるのが楽しみで……」
「ふふっ。おだててもらわなくても、後で騎士のみなさんには温かいスープとお勧めのパンを届けるわよ」