寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
そう言って笑ったセレナに、マークと呼ばれた騎士はぼーっと見とれた。
セレナ本人は気づいていないが、太陽の日差しに照らされた金色の髪が輝き、ただでさえかわいらしいセレナの顔をいっそう魅力的に見せているのだ。
体にフィットする乗馬服に身を包んだ立ち姿はスラリと伸び、王族としての気品が垣間見える。
「そうだ、この間ミノワスターを訪ねた時に剣の練習に付き合ってくれてありがとう。やっぱりいずれ騎士団長になるだろうと言われているマークには歯が立たなかったけど、あれから私も一生懸命練習したから、またよろしくね」
「は、はい。いつでも、喜んで」
マークは嬉しそうに答えた。
すると、その様子をセレナの背後から見ていたミケーレが、ふたりの会話を呆れた声で遮った。
「セレナ様。王女が剣の腕を磨くことに頭から反対はいたしませんが、すでに騎士たち相手に対等にやりあえる程度の力はお持ちです。これ以上剣を振り回す必要はございません」
「えー。まだまだ強くなりたいのに……。テオ王子はミノワスター一の剣の使い手だと聞いているし、負けたくないの」
セレナは両手を腰に当て、口を尖らせた。
男性であり、年上であるテオに、セレナが敵うわけがないとわかっていても、いつも本気でぶつかってしまう。
「もっと剣の練習をして、いつかテオに勝ちたいの。剣でなくてもいい、早馬でテオの隣に並んで一緒に走れるくらい、馬にも上手に乗りたい」
強い口調でミケーレにそう言うと、セレナは唇をかみしめた。
テオの隣に並んで走るだけじゃなく、他にももっと一緒にしたいことはある。
テオが好きなパンケーキなら、誰よりもおいしく焼けるようになった。
テオを表すブルースターの刺繍も、何回も練習して見事な花を糸で咲かせることができる。
それに、テオが勧める本は、全部読み終えた。
どの本もセレナの向学心を満足させ、ミノワスターの歴史や現在の課題について理解できた。
いずれ王妃となるセレナに必要だと考えて勧めてくれたのだろうけれど、テオも読み終えていると聞けば、集中して読むことができた。