寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 その時、ひときわ大きな歓声が聞こえた。
 見れば、クラリーチェとカルロがキスを交わしていて、国民たちが手を叩き、騒いでいる。

「カルロ殿下もランナケルドの人たちに受け入れてもらえたみたいで良かった」
 
 セレナの言葉に、テオが笑顔を返した時、ふたりの背後にいたジェラルドとサーヤがそっと声をかけてきた。

「セレナ……王太子妃様は、いかがでしょう? ミノワスターで健やかにお過ごしでしょうか?」

 遠慮がちな声に振り向けば、ジェラルドが傍らに寄り添う王妃サーヤと共に、セレナの姿を感慨深げに見つめている。
 実の娘だとは言ってもセレナは大国ミノワスターの王太子妃だ、ふたりが距離を取り言葉を選ぶのも当然なのだが、やはりセレナはそれを寂しく感じた。
 おまけにセレナとテオの傍らに控えている警護の騎士が、様子を注意深く見守っている事も、両者の立場を示している。

「……おかげさまで、国王陛下や王妃殿下、もちろんテオ王太子殿下によくしていただき、つつがなく過ごしています」
「それはなによりでございます。ミノワスター王国の王家の皆様は優しい方ばかりだと聞いております。これからも皆様にかわいがられてどうか健やかにお過ごしくださいませ。そして、ミノワスター王国の発展のために力をお尽くしください」
 
 ジェラルドとサーヤは腰を折り、頭を下げた。
 セレナは父のその姿に驚いた。
 思い出すのは国王として、父としての威厳のある姿ばかりで、頭を下げる姿など見た事はないし見たくはなかった。
 これが大国と弱小国との立場の違いというものなのだと、セレナは唇をかみしめた。
 一方で、別の想いも生まれていた。

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