寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
この数カ月、セレナは単なる王女ではなく、大国の王太子妃として公務に就き、それまでとは比べ物にならないほどの責任と義務を背負った。
いずれ大国を率いるテオのプレッシャーを傍らで感じるたび、父がランナケルドのために力を尽くしていた姿を思い出した。
国のためにクラリーチェを守らなければならなかった父の心情を、思いやる事ができるようにもなった。
そのおかげか、こうして互いの立場が変わり、言葉遣いにさえも注意を払わなければならなくなった今の方が、親子の距離が縮まったような気がした。
セレナは姿勢を正した。
「……先日は、たくさんのワインをありがとうございました」
凛とした佇まいながら、その声は優しく、両親への感謝の気持ちが聞き取れる。
ジェラルドとサーヤはセレナを見つめた。
国王であるという事を差し引いても、セレナと共に過ごした時間は少ない。
クラリーチェにかかりきりだった事も大きいが、セレナのために割く時間が全くなかったわけではなかった。
しかし、離れて過ごす時間が増えるにつれて、年頃のセレナとどう接していいのかわからなくなり、アメリアに任せっぱなしになってしまった。
こうしてセレナと向き合い視線を交わす事も滅多になかった。
日に焼けていた肌は落ち着き、生まれながらの白い肌に濃紺のドレスが良く似合っている。
我が娘はこんなに美しかったのだと、共に過ごさずにいた過去を悔やんだ。
堂々とした姿でテオの隣に立つセレナは王太子妃としての自覚に満ち、どこか寂しさをまとっていた頃の彼女とはまるで違う。
いずれ大国の王妃となる覚悟すら感じられる。
「セレナ、ご夫妻に、ハンカチをお渡ししないと……」
テオがセレナに声をかけた。
「あ、そうですね。えっと、ラーラはどこだろう」
両親とクラリーチェのために刺繍を施したハンカチは、ラーラが預かっている。
部屋の片隅でセレナの様子を見守っていたのか、ラーラは目が合うとすぐにセレナの側にやってきた。
「失礼いたします」
ラーラはジェラルドとサーヤに深くお辞儀をすると、手にしていたハンカチをセレナに手渡した。
セレナは丁寧にたたまれているそれをしばらく見つめた後、ジェラルドとサーヤに差し出した。